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カレッジ授業報告 「これって人種差別?」の巻

今日もカレッジの授業報告。
毎度毎度のことで、さすがにいい加減にしてくれよ、と思っている方も絶対いると思うのだけれど、「授業を受けてるみたいでおもしろい!」 などとご声援くださる方もいたりするので、ついつい書いてしまうのだった。

さて。
本日は外が70度を超える暖かさ。
あ、70度ってのは華氏で、摂氏だと、「20度を超える暖かさ」ね。
どうせ週末にはまた、氷点下の冷え込みが戻って来そうだし、「今のうち、今のうち」 と、ここのところ、気持ち悪いくらい自転車野郎やランニング野郎が街をウヨウヨと走っていたりする。

今回の授業は、イラン娘コンビ、ラナとラハが、しょっぱなからぶちかましてくれた。
むしゃくしゃとお菓子を食べているラナに、まず、ズーク先生が遠慮がちに注意したのがきっかけ。
「えっと、君。お菓子はピクニックか何かの時に食べてくれるかい?」
そしたら、ラナ、大笑いしながら、「いやーん、先生。これ秘密にしてね。実はラハのお菓子なの!」 と、全然注意されたことを気にしてない様子。若くて大人しいズーク先生、完全にこのイラン娘2人組になめられているのだ。
そこへラハがやってきて、「何何?」
ラナが 「実はね、あなたのお菓子をちょいと食べちゃって」
ラハが 「ウソ! ちょっとあんた、いい加減にしてよ!」
ラナ   「ごめんごめん、そしたら、先生に、お菓子を食べるならピクニックで、だって」
ラハ   「そのアイデア、素晴らしいわ! 先生! 今日はいいお天気だし、外で授業しませんか?」

私はのけぞっちゃったよ。
確かに、日本でも数十年前の漫画の一シーンなんかで、「せんせー、今日は良いお天気だから外で授業しませんか」 という生徒はいたよ。あるいは、熱血先生のほうから、「おーしっ! みんな、こんないい日に教室になんかいることないぜ。外で授業しよう!」 というのもお決まりのシーンだったよな。
でも、現実に、そういうことを言う子に、初めて会ったかも……。

ズーク先生はえらかった。
苦笑いしながら、「じゃあ、ビデオクリップをいくつか見たら、後半は外で授業しようか」
急きょ、野外授業が決まったのだった。

さて。野外に出る前に、ズーク先生が持ち出してきた 「教材」 とは、そもそも英国のテレビドラマで、アメリカでもリメイク版として2005年から放映された、The Office というテレビドラマの一エピソード。
(結構、話題になったエピソードらしく、この回について説明したウィキペディアも見つけたので、一応、ここにリンクしておきます)

実は私、The Office というドラマ自体も全然知らなかったもんで、これまた結構苦労しました。
授業で見るのはほんの数カットだけなので、よけいに話が分からないし。先生が登場人物や設定などを説明してくれるのだけれど、これでまずつまづいた。
どうやら、登場人物のマイケルという職場の上司が、人種差別的な問題を起こしたせいで、職場で racial diversity seminar を開くことになったんだけど、マイケルはこれを自分が仕切ろうとして……というような説明だったように思う。
で、最初に問題とされたマイケルの行動を説明する時に先生が何度もいう単語があったんだけど、これがどうしても理解できない。

先生の発音を聴く限り、Crossrock と聞ける。
岩を横切る?
crossroad ってのは知ってるが、crossrock なんて単語しらないぞ。
辞書で引いても載ってない。
前後がきれいに聴き取れているわけじゃないから、よけいに話が分け分からなくなる。

あとであれこれ調べてようやくナゾがとけた。
crossrock ではなく、Chris Rock
私と同い年で、全米でも最も有名な黒人のコメディアンの1人。人種問題を含む社会風刺がウリの彼のもの真似を、職場の上司役であるマイケルがはちゃめちゃにやっちゃって、問題になった、という設定だったわけ。
ちゃんちゃん。
名前とか、地名とか、ほんと、有名な固有名詞というのが一番クセモノだわー。
誰もが知ってるのに、私だけぜーんぜん知らないんだもの。

ま、それはそれとして、ドラマ自体はむちゃくちゃ面白かった。
マイケル自身が主催した racial diversity seminar で、彼は自分がいかに、人種差別的でないかをひけらかそうとして、それ自体が見事な社会風刺に仕上がっている、というようなプロット。

例えば、マイケルは、メキシコ人の部下相手に、「ところで、Mexican って言葉以外に、もっと offensive でない良い言葉はないかな? ほら、Mexican って言葉にはすでに、ビミョーな connotation があるだろ。何というか……ねえ」 みたいなことを言っちゃう。
メキシコ人の部下が 「Mexican は Mexican でしょ。offensive じゃないですよ。それより、あなたのいう、connotation ってどういう connotation ですか。それを聞きたいですね」 と気色ばむと、マイケルはあわてて、しどろもどろになっちゃったり。

全部きれいに分かったら、もっともっと面白いんだろうになあ、と思いつつも、なるほど、これはなかなか、絶妙な教材選びだなあ、と関心する。
なぜなら今日の授業のテーマは……

あなたの身近にある、人種差別かどうかビミョーな話
だからだ。

「さあ、では外で授業をしようか」
ズーク先生の一声で、みなで校舎の外に出た。
メモはとれないし、辞書は使いにくいし、さらに重なる悪条件!
こういう時は、最初にしゃべってしまうに限る。
とりあえず、みなで 「身近にある、人種差別かどうかビミョーな話」 の事例を出し合おうということになったので、最初に手を挙げた。
オバサン学生、怖いモノなし、である。

「日本人のごく仲良し同士で寿司レストランについて話をしてたの。ある人が言った。寿司レストランで板前さん(sushi chef)が日本人だとほっとするよね。日本人がchefだっていうだけで、おいしい寿司が食べられる気がするから、って。さて、問題。彼は、ethnocentricかしらん。まあね、これは、ほら、やっぱり日本人がシェフだと、『日本で長い間修行したんだろうな』とか期待しちゃうから、ある面仕方ないとは思う。ところが、たいてい、次に話題になるのは、『だったら、日本人じゃないシェフの場合はどうか』って話」

「たいていの人が言うのは、中国や韓国などアジアンの板前のほうが、まだ、アメリカ人やラティーノの板前さんより、おいしい、ホンモノに近い寿司を作ってくれそうな気がしちゃうってこと。さらにさらに。ある人なんか、アメリカ人とロシア人の板前だったら、ロシア人のほうが安心できる、っていう。ところが、実は彼は、ロシア人の握った寿司を食べたことがないのね。だから、彼がそう思ったのは単に、『ロシア人のほうが生魚を食べた経験がありそうだし……』っていうイメージだけだったというわけ。この手の、人種・民族のステレオタイプ化も、ある意味、人種差別なのかな」

「誰だって頭では、『寿司の味と、板前の人種・民族とは関係ない』 と理解できてる。それでもこんな風に思ってしまう。そういう意味では、完璧に post-racial ではありえないのよねえ、って結論にいたったのでした。おしまい」

まあ、こんなにスラスラと言えたわけじゃなく、つっかえながらだったんだけどね。
とりあえず発言できたから、いっか。
人種問題を頭でどんなに理解できても、最後まで乗り越えられない分野があるとすれば、それは料理やら食生活とか、ごく身近なところではないかな、と思う。もっと深いのはたぶん、恋愛とセックスなんだろうけれど。さすがに、その分野で事例を挙げられるほど私、経験豊かではないもので。

この後、イラン娘が、一言二言、ぱぱーっとしゃべった。
「N-word は人種差別だっていうけどさ、黒人だって N-word 使ってるのは差別だって言われないけど、あれも人種差別?」 と言った後、先生のほうに詰め寄って、「へへっ。すごーく良い実例でしょ。ね、ズーク先生、気に入ったでしょ? ね? ね?」
あああああ。
あまりにノリが軽すぎる。

(ちなみに、私、N-word ってのも知りませんでした。
あれこれ、随分と勉強になります。はい。)

このイラン娘にはちゃんと、黒人の彼女が一言説明してた。

「N-word は私自身は絶対に使わない。でも、黒人の友だちたちで使う人はいるわ。彼らがN-wordを使っても、私は、それが差別的だと思ったことはないわね。でも、白人がN-wordを使うのは、話が違うのよね。やっぱり、奴隷解放前のこの国で、あの言葉がどんな風に使われてきたのかという歴史を私は知っているから、白人の人があの言葉を使うと、それを思い出してしまう。誰が言ったのか、どんな風に言ったのかによって、違うんだと思う」

さらに、白人のふくよか系の女の子が面白いことをいいだした。

「この前、エチオピア料理のレストランに行ったの。それで、メニューを見て、好きな料理を注文したんだけど、そしたら、注文を受けてくれた店の女の子が 『うーん、この料理はたぶん、あなたたちにはおいしくないんじゃないかな』 というの。彼女は、私の家族のバックグラウンドも何も知らずに、そう言うのよね。単に私が白人だっていうだけで 『この料理はあなたたちのような人には無理よ』 って」

なんとなんと。
彼女は実はエチオピア系なんだそうだ。
あらためて、エチオピアって多民族な国だったっけなあ、と思い出した。
つまり彼女は、家族みんなで懐かしい味を求めて行ったエチオピア料理のレストランで、このセリフを言われちゃったというわけ。そりゃ、たまんないよね。
彼女はいう。

「おもしろいことに、実はその注文を取ってくれた女の子も白人だったの。私と同じエチオピア系の白人だったのね。ならば、相手が白人だからって、そういうことを安易に言うなよ、と思うんだけれど、いきなり、『その料理は、あなたたちには無理じゃないかしら』 だもんね。正直言って、私、ものすごーーーーーく気分を害したのよね」

さっきまでふざけていたイラン娘2人も、「だいたい、このカレッジにだって、中東やアラブ諸国に偏見持ってる教授はいっぱいいるわよ。私たちは、ああ、彼女はエジプト人だな、とか、ああ、この子はイラン人だな、とか全部わかるけど、こっちの人はたいてい分からないでしょ。だから、自分の目の前にイラン出身の学生がいると気付かず、イランをやり玉に挙げて、偏見をひけらかすような先生、結構いるのよ」 などと言っていた。

おもしろいなあ、と関心してしまった。
多民族国家のこの国では、多かれ少なかれ、こんな経験を誰もが当たり前のように体験してきたのだろう。

そんなわけで今日も実に楽しい授業でした。
20度の陽気の中、18歳やら20歳やらの女の子たちは驚くほど薄着で、みんな裸足にサンダル履き。背中出してる子もいるし。かたや私は……風は強いわ、腰は冷えるわで、黒いダウンコート着込んでました。
ははは、もうついていけませーん!

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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