息子のバットがここ3試合ほど沈黙していた。
ファーボールか三振か。
3三振、なんて日もあった。
下手にスコアをつけてるから、ついつい 「7打席連続でヒットなし」 なんて数えちゃうわけだな。
ところが、昨日の試合。
息子は投手としての登板なし、の日だったが、1打席目三振のあと、2打席目にセンター返しのきれいなヒットを久しぶりに打った。
ああ、快音。
硬球を使ったパワフル野球は息子には不利かなあ、と思ったけれど、息子によると、
「バットの真芯に当たれば、ちゃんと飛ぶんだよ」
だそうで。
それを証明してくれるようなヒットだったのでした。
野球が始まって2カ月余り。
やはり、野球シーズン初日の号泣事件が、息子にとって一つの転機になっていたことは確かなんだと思う。
あの時を境に、夜のベッドの中で 「このまま目が覚めなきゃいいのに」 なんて哀しいことを言わなくなった。英語を極端に嫌うこともなくなった。
クラスの中で唯一、息子に親しげに話しかけてくれるファイークという少年を相手に、少しずつ英語をしゃべろうとしていることも、漏れ伝わってきた。
野球チームでは、かっこつけてる分、下手な英語なんてしゃべらないぞ、とどこかで思っているらしく、英語でチームメートと会話することはないが、それでも、何人か 「好きな友達」 はできたようだ。
もちろん、今でも、ベンチの中では一人ぽつねんと、所在なげなことも多いけどね。
あれも、これも、野球のお陰、なんだと思う。
だけど、嗚呼!
もう2〜3週間で、春の野球シーズンはお終い。
夏は、暑いから、野球はしないんだって。
日本の夏のほうが、たぶん、ずっと蒸し暑いと思うんだけどね。
次のシーズンは秋。
春ほど試合数もないし、期間も短い。
それが終われば……野球のない、長い長い冬がまたやってくる。
だからついつい焦っちゃう。
ああ、どうか、野球シーズンのうちに、もっと英語がしゃべれるようになって、お友達と会話できるようになって、毎日が楽しくなって、息子の幸せそうな顔をもっともっと見られないかしら、なんて。
さて、今の季節、多くの少年野球リーグはトライアウトを行う。
よりレベルの高いチームで、これからの秋、冬、来春を通して、遠方のチームとも対戦するセレクトチームの選考会、である。
我がチームの中でも、9歳でチーム一のパワーを誇るザックと、米国東海岸空手チャンピオンのマイケルは、トライアウトを受けることが決まっている。
色々な課外活動を幅広く行うことのほうを好むこの国では、1年中、週に何日間も野球漬けの日々になることなんか望まない親も多い。だから、思ったより、セレクトチームの希望者もいないんだそうで。
ザックもマイケルもたぶん、選ばれると思う。
比較的、息子に優しくしてくれた2人が、秋からチームにいなくなると思うと、ちょっと寂しい。
実は、このトライアウトに息子も挑戦させちゃおうっか、という話も我が夫婦の中にはあった。
上を目指せば目指すほど、色々なチャンスをつかむことのできるこの国では、より競争の激しい場所を求めていくことが成功への道。だから本気で野球をやりたいヤツは、上へ、上へ、と上っていく。
一方、はなから、「お楽しみ目的の野球」 を銘打ってる地域リーグの通常チームは、週に2〜3回試合することはあっても、練習はほとんどなし、という具合。
少々物足りない、というのが本音でもあった。
もちろん、息子にはとてもそんな実力はないと思うし、選ばれない可能性のほうがずっと高いと思うのだけれど、やはり、せっかくこの国に来たのだから、本当に野球が好きで、本気で野球をやってるヤツラの存在を、息子にみせてやりたい、と思ったのだ。
そんなこんなで夫婦して思い悩み、息子の希望を聞いてみれば、
「どっちでもいーよ」
の返事。
なかなか本音を言わない彼のこの言葉を、「翻訳」 するならば、
「実力が上のチームってどんななんだろう。気になるな。見てみたいな。挑戦してみたいな。でも怖いな。オレが一番下手だったら嫌だな。トライアウトを受けて落ちたらいやだな。それに新しいチームになったら、どんなチームか分からないし。今のままのほうがちょっと安心だな。でも、セレクトチームに入れて、上手になったら、父ちゃんも母ちゃんも、土曜日の日本語補習校を休ませてくれるっていってるし、それだったら、学校は休みたいから、セレクトチームのほうがいいな。でも、受からないだろうな。怖いな……」
というような葛藤の果ての、「どっちでもいーよ」 なのである。
ところが、そんな息子をながめながらの我が夫婦の心の揺れは、今のチームの監督からの1本のメールで一気に消えちゃった。
「僕らのチームは、あなた方の息子さんをチームメートに迎え入れられて本当に幸運だったと思います。息子さんが、野球チームに入ったことで、以前より幸せそうで、友達もできた、というお話を聞いて、僕も本当にうれしいです。だって、僕らの野球で一番大事なのは、それだと思うから」
夫がぽつり。
「トライアウトはやめよう。今のあいつにとって、一番大事なのは、野球がうまくなることじゃなくて、野球を通して友達や仲間を作ることなんだから」
私も、120%同感。
そんなわけで、今年の秋、そして長い冬の後に待っている来年の春も、今の仲間と一緒にプレイすることに決定!
英語ネイティブの野球ママの会話はものすごく早くて、なかなか私にはついていけないんだけれど、こうなったら息子に負けず、私もここで友達を増やすぞ! と心に決めたりしてます。
ファーボールか三振か。
3三振、なんて日もあった。
下手にスコアをつけてるから、ついつい 「7打席連続でヒットなし」 なんて数えちゃうわけだな。
ところが、昨日の試合。
息子は投手としての登板なし、の日だったが、1打席目三振のあと、2打席目にセンター返しのきれいなヒットを久しぶりに打った。
ああ、快音。
硬球を使ったパワフル野球は息子には不利かなあ、と思ったけれど、息子によると、
「バットの真芯に当たれば、ちゃんと飛ぶんだよ」
だそうで。
それを証明してくれるようなヒットだったのでした。
野球が始まって2カ月余り。
やはり、野球シーズン初日の号泣事件が、息子にとって一つの転機になっていたことは確かなんだと思う。
あの時を境に、夜のベッドの中で 「このまま目が覚めなきゃいいのに」 なんて哀しいことを言わなくなった。英語を極端に嫌うこともなくなった。
クラスの中で唯一、息子に親しげに話しかけてくれるファイークという少年を相手に、少しずつ英語をしゃべろうとしていることも、漏れ伝わってきた。
野球チームでは、かっこつけてる分、下手な英語なんてしゃべらないぞ、とどこかで思っているらしく、英語でチームメートと会話することはないが、それでも、何人か 「好きな友達」 はできたようだ。
もちろん、今でも、ベンチの中では一人ぽつねんと、所在なげなことも多いけどね。
あれも、これも、野球のお陰、なんだと思う。
だけど、嗚呼!
もう2〜3週間で、春の野球シーズンはお終い。
夏は、暑いから、野球はしないんだって。
日本の夏のほうが、たぶん、ずっと蒸し暑いと思うんだけどね。
次のシーズンは秋。
春ほど試合数もないし、期間も短い。
それが終われば……野球のない、長い長い冬がまたやってくる。
だからついつい焦っちゃう。
ああ、どうか、野球シーズンのうちに、もっと英語がしゃべれるようになって、お友達と会話できるようになって、毎日が楽しくなって、息子の幸せそうな顔をもっともっと見られないかしら、なんて。
さて、今の季節、多くの少年野球リーグはトライアウトを行う。
よりレベルの高いチームで、これからの秋、冬、来春を通して、遠方のチームとも対戦するセレクトチームの選考会、である。
我がチームの中でも、9歳でチーム一のパワーを誇るザックと、米国東海岸空手チャンピオンのマイケルは、トライアウトを受けることが決まっている。
色々な課外活動を幅広く行うことのほうを好むこの国では、1年中、週に何日間も野球漬けの日々になることなんか望まない親も多い。だから、思ったより、セレクトチームの希望者もいないんだそうで。
ザックもマイケルもたぶん、選ばれると思う。
比較的、息子に優しくしてくれた2人が、秋からチームにいなくなると思うと、ちょっと寂しい。
実は、このトライアウトに息子も挑戦させちゃおうっか、という話も我が夫婦の中にはあった。
上を目指せば目指すほど、色々なチャンスをつかむことのできるこの国では、より競争の激しい場所を求めていくことが成功への道。だから本気で野球をやりたいヤツは、上へ、上へ、と上っていく。
一方、はなから、「お楽しみ目的の野球」 を銘打ってる地域リーグの通常チームは、週に2〜3回試合することはあっても、練習はほとんどなし、という具合。
少々物足りない、というのが本音でもあった。
もちろん、息子にはとてもそんな実力はないと思うし、選ばれない可能性のほうがずっと高いと思うのだけれど、やはり、せっかくこの国に来たのだから、本当に野球が好きで、本気で野球をやってるヤツラの存在を、息子にみせてやりたい、と思ったのだ。
そんなこんなで夫婦して思い悩み、息子の希望を聞いてみれば、
「どっちでもいーよ」
の返事。
なかなか本音を言わない彼のこの言葉を、「翻訳」 するならば、
「実力が上のチームってどんななんだろう。気になるな。見てみたいな。挑戦してみたいな。でも怖いな。オレが一番下手だったら嫌だな。トライアウトを受けて落ちたらいやだな。それに新しいチームになったら、どんなチームか分からないし。今のままのほうがちょっと安心だな。でも、セレクトチームに入れて、上手になったら、父ちゃんも母ちゃんも、土曜日の日本語補習校を休ませてくれるっていってるし、それだったら、学校は休みたいから、セレクトチームのほうがいいな。でも、受からないだろうな。怖いな……」
というような葛藤の果ての、「どっちでもいーよ」 なのである。
ところが、そんな息子をながめながらの我が夫婦の心の揺れは、今のチームの監督からの1本のメールで一気に消えちゃった。
「僕らのチームは、あなた方の息子さんをチームメートに迎え入れられて本当に幸運だったと思います。息子さんが、野球チームに入ったことで、以前より幸せそうで、友達もできた、というお話を聞いて、僕も本当にうれしいです。だって、僕らの野球で一番大事なのは、それだと思うから」
夫がぽつり。
「トライアウトはやめよう。今のあいつにとって、一番大事なのは、野球がうまくなることじゃなくて、野球を通して友達や仲間を作ることなんだから」
私も、120%同感。
そんなわけで、今年の秋、そして長い冬の後に待っている来年の春も、今の仲間と一緒にプレイすることに決定!
英語ネイティブの野球ママの会話はものすごく早くて、なかなか私にはついていけないんだけれど、こうなったら息子に負けず、私もここで友達を増やすぞ! と心に決めたりしてます。
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