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キョンに会ったこと

地元の図書館の外国人向け英会話クラブで先週会った韓国人女性、キョンの話を書こうと思う。

先週初めて会った時、この手のクラブでお決まりの、「どのくらいアメリカにいるのですか?」 という質問に、小さい身体をもっと縮めて、「2年もいるんですけど……」 と答えたのが妙に印象に残ってた。
今朝、1週間ぶりに再会したら、むこうもなぜか私のことを覚えていて、隣のイスに座って、と呼んでくれた。
このクラブ、アジアンとヒスパニックが2大勢力で、妙にアジアン同士は親近感を募らせちゃったりするのである。

この日は、ボランティアに来てくれた先生役の米国人が一人で勝手にベラベラとしゃべっちゃったので、みな少々、しゃべり足りず、欲求不満気味。
そんなこんなで、クラブの後に、少しキョンと話しをしたのだった。
私が大量に図書館で児童書を借りてるのを見て、「私も借りたい! 何を読めばいいか、教えて」 という。
「わかんないけど、とりあえず、ニューベリー賞を取った比較的新しい書物をピックアップしてきたから、一緒に借りましょうか」 と私。
結局、2人して仲良く、

・The Higher Power of Lucky (Susan Patron)
・Criss Cross (Lynne Rae Perkins)

の2冊をそれぞれ借りた。
あまり蔵書のない図書館でも、ニューベリー賞受賞作品はさすがに2~3冊置いてあったので。

キョンは、2年もアメリカにいるのに、英語があまり話せないのをとても恥じ入っている。
でも彼女は、2年前に韓国を出てきたんじゃないんだ。
実はもう国を出て7年になる。

始まりは、今17歳の息子さんが幼稚園だったころ。
家族でバンクーバーに旅行したら、まだ6歳だった息子さんがすっかりカナダを気に入ってしまった。
「親を残して一人でもカナダで暮らしてみたいって言ったの」
キョンは言う。
でも、幼稚園児が本当にそんなことを言うのかなあ、とちょっと疑問。
きっとキョンも夫も、息子さんに国外で教育を受けさせてみたい、という思いがあったんだと思う。
息子さんは、そんな両親の思いを敏感に感じ取ってもいたんだと思う。

結局、そんなこんなで、息子さんが小学校に入学するタイミングでキョンは息子と2人でカナダに渡った。
アメリカではなく、カナダ。
キョンによると、「アメリカはビザが大変で最初は無理だったから。カナダなら、その当時、1年のビザがもらえたの。あとは延長、延長を続ければ、子どもと一緒にカナダに住めたからね。アメリカだと、ビジタービザでたぶん数カ月がせいぜいだと思う。実際、韓国人で、子どもの教育のために夫を国に残して海外に渡るケースでは、アメリカ、カナダ、オーストラリアがポピュラー。でもアメリカは長期ではなかなかいられないのよ。オーストラリアは安いけど、教育レベルはほかの2国のほうが高いってみな言ってるわ」

韓国や中国で、子どもを国際派に育てようと、夫を置いて子連れで海外に渡るママたちが増えてる、とは何度もニュースで読んだけど、実際に目の当たりにすると、その信念に圧倒されちゃう。
まして韓国での英語熱は本当にすごいらしい。
toefl(米国留学のために必要なスコアを得る試験)を受けるにも、受験希望者が多すぎてなかなか予約が取れず、わざわざ日本まで来て受験する人がいる、と聞いたこともあったっけ。

キョンはカナダで5年ちょっとを過ごしたらしい。
でも、英語は一切話せなかった。なぜか。
「カナダでは、子どもの教育のためにビザをもらうことはできても、働けないだけでなく、親が英語を習うことも禁じられていたの」
このあたり、少し法律を調べてみようと思う。
どういうことなのかよくわからないけれど、とにかく彼女は異国で、5年以上、ひたすら子どもの教育のために暮らし続けたんだ。

英語を習いに行ったり、何かを学ぼうとしたり、そんなことを何も考えずに。

彼女がラッキーだったのは、詳しく彼女は話してくれないけれど、実父が自国で何らかのコネクションを持っている人だったから。
カナダに暮らしながら、韓国で米国のグリーンカードを申請し、1年待って親子でグリーンカードを取得。はれて今度はアメリカに渡ってきたというわけ。

アメリカで息子さんはハイスクールの学生さん。
10歳から韓国を離れてる彼は、「韓国には戻りたくない。仕事をするなら、アメリカか。いや、カナダが一番好きだな」 と言ってるらしい。
息子が独立したら、どうするの?
そう尋ねたら、「韓国に戻ると思う」 とキョンは言った。

彼女はなぜ、アメリカに暮らして2年目にようやく、図書館の英会話クラスに顔を出し、英語を学ぼうと思ったのかな。
息子さんに何か言われたのかな。
またいつか、聞いてみよう、と思った。

私は、「家族は一緒にいるべき」 ということを最優先して、日本を出てきた。仕事もやめた。日本に残りたがった息子をアメリカに連れてきた。息子は今でも 「日本に帰りたい」 という。
息子みたいな性格の男が、いきなり親の都合で外国に連れてこられて、言葉の分からない学校に毎日通わなければならないのは、きっと大変だろうな、とも思う。
息子の教育面からいうと、もちろん得るものも大きいと思うけれど、失うものもまた、大きいんだろう。
それでも結局、家族でアメリカに来ることを選んだのは、「家族で一緒にいること」 は何にも替えられないと思ったから。

キョンは、そしてたくさんの韓国人のお母さんたちは、どんな思いで子どもと2人、海を渡るんだろう。
お父さんと一緒に暮らせないことの子育て上のマイナス面を、どんなふうに考えているんだろう。
いつか聞いてみよう。
キョンは、私の選択を逆にどう感じるんだろう。

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プロフィール

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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