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一軒家に引っ越すということ 2 (締め出しをくらった初夜)

10月28日の日曜日。
我々家族は1カ月暮らしたDC直近快適アパートメントを引き払い、いよいよポトマックの外れの新居に完全転居いたしました。

家にある荷物は、私たちが手荷物で持ち込んだ荷物と、防寒具など航空便で届いた荷物。さらに、夫の前任者が売ってくれた、ソファ2セット、テーブルセット、ベッド4個など。
暮らすために、初日から最低限購入が必要と思われたのは、

・掛け布団とシーツのセット
・ランプ
・スプーンとフォーク

でした。

アメリカでは間接照明が中心なので、トイレやバス、キッチン以外ではほとんど照明がありません。真っ暗な中で暮らすわけにはいかないので、最低限数個のランプが必要だったのです。
さらに、お皿やお鍋はあれこれ知人にお借りできたのだけれど、なぜかスプーンとフォークは盲点でして。
こちらも急を要しました。

ってなわけで、夜暗くなるまで、あっちこっち買い物をしまくって、さて、家に帰ってきたのは午後7時過ぎ。

ガレージを開け、家に到着。
ガレージから部屋に続くドアを開けようとしたら……。

あれれ?
開かない……。

なんとなんと。
ガレージと部屋をつなぐドアは、部屋側からは普通に開けられるドアなのに、ガレージ側からだとカギが必要なのです。
バタンと締めるだけで勝手にカギがかかっちゃうのですね。
慌てて、部屋のカギを試してみたのだけれど、どうも違うカギみたい。

仕方なく、ガレージの外に出て、玄関から入ろうとして、真っ青に……。
なんとなんと、たぶん慎重派のうちの息子が (本人は固く否定)、ドアにチェーンロックを掛けてたのです。

ど、ど、どあが、開かない……。

引っ越し初日から、なんと我々家族は、家から完全に閉め出されちゃったのでした。
買い物に出かける時は部屋から玄関ではなく、ガレージ経由で外に出たため、チェーンロックに気付いていなかった、というわけ。

裏庭に回って窓なども試してみるものの、いずれも締めた途端、内側から勝手にロックがかかる仕組み。
どうやっても、入れる場所はなかったのでした。

しんしんと冷え込んでゆく夜。
家族3人で、ガレージの中。
明日は息子の現地校初登校の日だというのに……。
夕飯もまだ。
お腹は、ぐうぐう。
いったいどうすればいいんだろ。

結局、不動産会社の担当者の連絡先がすぐに分からなかったため、不動産の仲介でお世話になったK女史に電話して、相談してみました。

結論からいうと、カギ屋さんを頼むまでもなく、K女史が日頃世話になっているという、家のあれこれをやってくださっている男性が、わざわざ我が家まで来て、チェーンロックを開けてくれたのでした。
最初はチェーンを切る予定だったのですが、懐中電灯でよく見ると、すぐに壊せそうなチェーンだったため、金具を壊して外し、ようやく家族3人で無事に家に戻ることができたのでした。

いやはや。
参った参った。
家族とも、精神的に疲れ切っちゃって、とてもそれから料理して食べようという気も起こらず、その夜は、お湯を入れるだけで食べられるご飯、というやつと、インスタントみそ汁を食べて、おしまいにしました。

この 「お湯を入れるだけで食べられるごはん」 ですが、日本の友人が 「絶対に役に立つから」 と持たせてくださったものです。
渡米から1カ月間、何でもそろった快適なアパートで適当に料理して暮らし、「さすがにこんなの必要なかったわー。文明国アメリカだもんねー」などとのたまっていたら、とんでもない!!

お湯を入れるだけで食べられるご飯は、3種類。
わかめごはん、かやくご飯、お赤飯。
息子は、しみじみと 「こんなことがあった後に食べるご飯は本当においしいね」。
いやはや、まったく。

すっかり遅くなり、真っ暗な部屋。
寝室のウォークインクローゼットについている電球の明かりを頼りに、買ってきたばかりのランプを家族で必死で組み立てました。
これがないと、部屋が暗いままですもんね。

苦労しながら組み立てたランプは、本当にまぶしくて、なんか家族してしみじみ見入ってしまいました。
夫がぽつり。

「なんかもう、遠くまでキャンプに行きたいとか思わないよな。これで十分、サバイバルだもんな」

まったく同感。

暗闇の中、携帯電話を命綱に、K女史に電話した時、彼女は言いました。
「大丈夫。結構よくあることだから、悲観しちゃダメよ。うちなんか、2階の窓を一箇所、カギを開けておいて、いざとなったら近所から長いはしごをかりて、屋根に上って、窓から家に入ることにしてるのよ」

たぶん50台後半のはずのK女史が、屋根に上る姿を想像した時、なんだか私、胸があつーくなってしまった。
ほんの1週間ほど前、たかだかディスペンサーを直しただけで、有頂天になってた私だけれど。
あんなの序の口。
こっちの人は、何だって自分でやれちゃうんだ。

K女史に、「あなたは本当に運がいいわ。もし、カギ屋を呼んでも普通は2時間くらい待たされるのが普通で、お値段もすごく高いの。今回は、10分でそっちに駆けつけてくれる人が見つかっただけでも、あなたはすごくラッキーなのよ」 と言われて、しみじみ思った。

この国では、「私はラッキー」 と思えた人のほうが強いんだ。
寒風の中、震えながら何かを学んだ、引っ越し初の夜……。


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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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