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■ダック・シーズン(フェルナンド・エインビッケ監督)

■ダック・シーズン(フェルナンド・エインビッケ監督)

お金をかけずにこれほど楽しい作品もできるのね、という感じのメキシコ映画。
カメラ位置や映像の使い方に癖があり、おまけに白黒映画なので、映画に詳しい人はきっといっぱいうんちくを語れるのでしょうが、私は素人なので、ただただ声を上げて笑ってました。

登場人物は主に4人。
14歳のフラマは両親の離婚話にイライラ。戦闘ゲームが得意。すぐにカッとする自分を抑えられない。
フラマの親友のモコ。成績もスポーツも苦手で何をやってもぱっとしないうえ、かなわぬ恋に悩んでいる。
2人と同じアパートに暮らす16歳の少女リタ。パパの顔を知らない。2月29日が誕生日で、ママはいつも誕生日を忘れてしまうのだ。
最後にピザ配達人のウリセス、35歳。犬の収容所で勤めていたが、犬を殺すのに耐えられず、ピザ配達人に。田舎に帰りたいが、大叔母の世話を押しつけられ、帰るに帰れない。

孤独や空虚感ややりきれなさを抱えた4人が偶然、アパートの8階にあるフラマの部屋に集まるところから、物語は始まる。

最初はフラマとモコの2人が会話もなく、戦闘ゲームに興じるところから。ポテトチップスとコーラを片手に、闘うゲームのキャラクターがかたやビンラディン、もう一方がブッシュ、というあたりもシュールだ。
ところがゲームが山場にさしかかるとなぜか停電。2人は、停電のたび、会話さえ途切れ、いらいらを募らせるばかり。ここに2歳年上のリタ、さらに年上のウリセスが上手に絡んでいくところが見所。

安上がりに作られた1本の映画が、口コミであれよあれよと人気沸騰、メキシコ本国では大変な大ヒットになった、というのもなんとなく分かる。

人間なんて、それぞれに心に壁を築いているからね。それをお互いに崩していくのはとても大変。この映画では、これを切り崩すきかっけとして、まず停電、それから一枚の絵、そして決定打としてマリファナ入りのブラウニーが使われている。

特にマリファナ入りの菓子を食べた後の映像がものすごくリアルで、笑える。
延々と笑えるので、もう、声をこらし、肩を震わせ、笑うしかなかったほど。
トリップした4人が、サイダーの泡がシュワシュワシュワーっとするのに身もだえしちゃったり、水道の蛇口から落ちる水滴の音にビンビン響いたりするところ、ものすごくリアルで笑える。
笑えるだけに、ちょっと悔しい。
結局、4人が心を開き合う「交友接着剤」となったのは、ドラッグかい? と思ってしまう。わかるけどさ。マリファナならでは、ってのもよく分かるけどさ、例えばこれが代わりにスポーツだったり、音楽だったり、何か別に夢中になれるものだったとしても、物語は成立しそうだけど、やっぱりマリファナほどのリアリティーを得られない気がして、それが一番悔しい(マリファナを推奨しているのではありません、念のため)。

それにしても。
同じような心のモヤモヤを抱えた4人が、こんなふうに偶然出会い、ぶつかり合いながら、お互いを理解し、言葉ではなく別のもので何か勇気づけ合い、それぞれが自分で歩みを進めていくまでの過程を、高層アパート8階の一室の中だけで描いてしまって説得力がある、ということにも感心したけれど、逆に、こういう「素敵な偶然」がたくさん重なった無理な設定でしか物語が成立しないというのがまた、現実の社会をきれいに切り取っているようで、これまた結構悔しかったりするのだ。
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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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