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★くうねるところすむところ(著・平安寿子)

★くうねるところすむところ(著・平安寿子)

30代の働くすべての女性にお勧め。
20代、40代にはダメかというと、決してそうではないけれど。

崖っぷちに立つ30歳と45歳の女2人が、全く知らなかった土建屋の世界に飛び込み、壁にぶち当たりまくりながら、時には体当たりで壁をぶっ壊しながら、あきれるほどの前向きさと決断力とを武器に日常を爆走する話、というべきか……。

まず平安さんの文章が好き。
例えば、12月の描写。

「街が浮かれている。十二月だからだ。クリスマスを祝え。お歳暮は贈ったか。忘年会はどこでやる。諸人こぞりて金を使え、とけしかけている」

小気味が良く、嫌味がなく、さばさばしている。
こんな文章があっちこっちにあって、それだけで読書が楽しかった。

もう一つ、この本を20代でも40代でもなく30代に薦めたい気分になったのは、主人公の一人、30歳の梨央の恋愛が何とも、たまらなく良いから。
職場の上司との不倫に倦怠期が訪れ、なんだか崖っぷちの30歳の誕生日の日、梨央は、とび職の男に一目惚れする。おまけに上司と仕事でぶつかり、会社をやめて土建屋の世界に飛び込む。
でも、そんな一目惚れの相手との恋愛に、なんというのかなあ、余裕と勢いがあるんだ。

20代にはない余裕。
40代にはない勢い、とでも言おうか(それとも40代にも勢いがあるんだろうか。勢いがないのは、私@39歳だけ?)。

工務店で現場監督に抜擢されつつも、土建屋の世界から逃げない。そして、とび職男の徹男に、「わたし、この世界で頑張るわ。きっと徹男さんに仕事発注する側になって恩返しする」なんてタンカを切ってみたりもする。
心の中で、「そうなったら、俺のことをあてにするななんて、絶対に言えないでしょう? 男と女は五分五分だ。あてにするとかされるとか、そんな依存関係で結びついたって、結局はお互い重みでグズグズの共倒れになるだけだ。わたしは、強くなる。あなたと同じ世界で生きるために」と。
いいなあ、この余裕と、それから勢い。

なかなか心を開こうとしない徹男に酔っぱらって絡むシーンも好き。
心の壁を切り崩そうと言葉を尽くしに尽くし、それでもダメそうと思ったら、とりあえず「あきらめてあげるから、ちょっとだけサービスして」と、相手にいきなりキス。
ここの文章も笑えた。

動かない唇に自分の唇を押し付けた。乾いて、ふっくらしている。舌をそっと出してチラリと合わせ目をなぞってみたが、唇は開かない。コンチクショー。おまえは石像か。

一方で必死に迫りつつ、どこか心の余裕の部分で「石像か」とのたまえる柔軟な心。20代ではもっと必死さが前面に出てしまうし、かといって39歳の私には残念ながらもう、かつてのように「好きと思ったら落とす」をモットーに相手に無理にキスしたり押し倒したりする勢いはないなあ。

とにかく元気の出る本です。
感涙ブームの折、「絶対に泣ける本」ばかりが書店を席巻する中、でもこういう本がちゃんと売れ、評価されていることがうれしいわ。






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プロフィール

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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