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★セックスレスキュー(著・大橋希)

★セックスレスキュー(著・大橋希)

セックスレスに悩む女性たちが、性人類学者キム・ミョンガン氏の相談室を訪れては、「性の奉仕隊」(長い前戯を含むセックスで女性を癒す男性要員)を紹介され、身体も心も柔らかく溶かしていく、というような話。
内容が衝撃的なこともあって、大変話題になったノンフィクションです。

実は、ここに登場するキム・ミョンガンさん。私が18~22歳まで5年間たっぷり暮らした京大熊野寮の住人さんだったんですよね、ちょうどあの時期。
彼とは何度かお会いして、身体を温める食べ物のことや、マッサージの大切さ、性の大切さ、などを説いてもらった記憶もあります。
でも、まさか彼がその後、拠点を東京に移し、「性の奉仕隊」を主宰し、ご活躍とは……知りませんでした。
(京都時代にベッドをともにした女性が200人を下らない、という話ももちろん、当時は知りませんでした)。

話の内容は衝撃的で興味深く、おもしろいし、書き手としても素直で読みやすい構成に仕上げてくださったと思います。
ただ、インタビューの受け手の本音にまだまだ迫れていないような物足りなさは残りました。もちろん、これは書き手の問題というよりは、ことセックスの問題を取材するのがいかに難しいか、ということなんだと思います。

実際、私自身が例えば薬物やリストカットの取材をしていても、なかなか性の問題については突っ込んで聞きにくい。
でも、実は、体位の好みまで尋ねないと見えてこないセックスに対する劣等感、嫌悪感もあるし、それが色々な問題の大事な鍵を握ってることだってあるんですよね。そこまで分かっていて、それでもなかなか、取材相手にその点について突っ込めない自分がいます。
若い子には取材できても、自分より年上の女性には質問できないとか、相手が男性だと取材しずらいとか。
思春期の男の子の取材なんて、性をよけて話を聞いても絶対に本音にたどりつけないわけで。
性の取材の難しさは、私も日々実感するところです。はい。

あと、本書を読んでいて興味深かったのは筆者のスタンスの行方でした。
筆者が取材して回る姿まで文章に書き込むスタイルを採っているのですが、これだと当然、筆者自身のセックスについて言及するかしないか、という選択を迫られます。
言及しないと、その分、読者に伝わるものの重さが軽減されてしまうだろうし、だからといって、筆者が「自ら『性の奉仕隊』の男性とセックスしてみた」まで行ってしまうと、それはそれで読者は別の意味で困惑しそうだし。
どの程度自己開示するのか、は結構大事な点だと思ったのです。

結局、出張ホストを体験するけれど、単に話を聞くだけで終わる、という極めてバランスの良い開示の仕方に留め、露悪趣味にも走らず、かといって、まったく触れない不自然さからも距離を置いた感じ。
最近のノンフィクションの流れから見て、これを物足りないとする人はいるでしょうが。

ただ、私自身が「性の奉仕隊」を利用する女性たちの苦しみを理解できても、自分自身が利用したいとは思えないのと同じ葛藤を、筆者も常に感じていたはずで、そこをもうちょっと自己分析してほしかった気がしました。

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プロフィール

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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