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★ふにゅう(著・川端裕人)

★ふにゅう(著・川端裕人)

パパの子育て小説。それも「おれって結構子育てに協力してるんだぜ」的な「協力」の域を出ないパパではなく、もっと主体的に父親として葛藤し、子どものぬくもりに突き動かされるようにして子育てに頑張るパパの短編5作。

「ふにゅう」は、妻と交代で半年間育児休業を取得したパパの話。赤ちゃんがどんなに泣いても、おっぱい一つで赤ちゃんを泣きやましてしまい、おっぱいを持つというだけで「特別な存在」になれる母親を「ずるい」と思い、パパは決意するのです。「おっぱいがほしい」と。
女性ホルモンを飲み続けたパパは……というお話。
ちなみに「ふにゅう」は、父乳、です。出るのですよ、これが!

びっくりしたシーンが一つ。
パパが授乳中の母と子のような、密度の濃い肌と肌のふれあいを求め、試行錯誤した末に、赤ちゃんの鼻水の自分の口で吸い上げてやり(これは親としては普通の行為)、それをきっかけに、娘の顔中をなめまわし、体中を、股間までも、とても自然な行為として、なめながら、厳粛な思いで「ぼくらってほ乳類なんだよなあ」と思う姿はかなり壮絶です。
(一つ間違えたら性的虐待なんだけどねえ)

他の作品についても。
「デリパニ」は出産に恐る恐る立ち会う夫の話。
「ゆすきとくんとゆすあしちゃん」は、「ママと結婚する」という息子に嫉妬するパパの話。

「桜川エピキュリアン」は、エンタテイメントとしては一番笑えた小説で、一生懸命ママ役も務めている父子家庭のパパに、ゲイの友人が「君はかなり女性化してるぞ。君の息子は将来、男性の性アイデンティティーを獲得できなくて僕みたいになるんじゃない?」なーんて言っちゃったものだから、パパが必死にジムで男らしい身体を目指して頑張る、という話。
エンディングも含め、パパの悲喜こもごもが味わい深いです。

「ギンヤンマ、再配置プロジェクト」は、キャリア志向の強いママが1カ月の海外出張に行ってしまい、寂しさから不安定になる保育園児の娘と息子を守るため、パパが必死で頑張る話。

ちょっとうらやましいと思ってしまった。
我が家では、息子が2歳のとき、私が1週間の海外出張に行ったことがあってね。
保育園の保母さんたちは「保育園の日常を大事にしたほうが、息子さんの精神的な負担は軽く済む。ご主人が夜10時ごろまでに帰宅してくれれば、夕方からそれまでは私たちが順番にあなたの自宅で息子さんの面倒をみてあげる」とまで申し出てくださっていた。
でも、夫は「夜10時までに毎晩帰れるわけないだろう」と。それで息子を仙台の義父母宅に預けっぱなしにするしかなくなった。
一方で、夫は自由に海外出張に出かけているというのにねえ。

あの時に夫に感じた「不公平だ」という思いと、「会社に事情を話して1週間だけ早く帰ることすらできないのかよ」という夫への落胆は、たぶん、死ぬまで消えないだろう。(とりあえず5年経った今なお、あの時の思いは生々しい)。
最近は夏休みや冬休み中の学童保育のお弁当作りまで分担し、息子にも頼りにされている父ちゃんなんだけどね。

ところで、そうそう、本の話。
ママ不在による寂しさも限界を超え、「ママ、ママ」と号泣する2人を両腕に抱きかかえ、真っ暗な寝室で子どもたちを抱きしめるパパのシーンは良いです。
この話を読みながら、「こういう思いを味わったことのあるパパは、まだまだ世の中には少ないよなあ」と、うらやましくも切なくなったのでした。

さて、「ママよりも主体的に育児に関わるパパ」というのがこの本には何人も出てくるわけだけど。
現実にはどのくらいいるのかなあ(何人かは、私も知っているけど)。
この小説が、「未来小説」ではなく、現実を描いたものだと信じたいな。
こういうパパが増えたら、たぶん、少子化問題は解決すると思うんだけどな。

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プロフィール

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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