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夜回り先生と義務と権利と死刑制度

もう電気も消して、寝るぞ、というタイミングで、布団の中の息子がいきなりこう言った。
「ねえ、母ちゃん、どうして水谷ちゃんは、本を出したり、テレビに出たりするの?」

ちなみにうちの息子は「夜回り先生」こと水谷修さんのことを「水谷ちゃん」と呼ぶ。赤ちゃんの時からの付き合いなのだから、そういうものなのかもしれない。
いきなり直球投げられたみたいにひるむ私に、息子は言う。「ほら、髪の毛の変な色の人とかがいる夜の街を歩くの、あれどうして?」
なるほど、水谷さんがなぜ「夜回り」をするか、その理由を知りたいらしい。

「それはだな、水谷さんはそもそも高校の先生であって……」
よせばいいのに、私はいきなり、彼のライフヒストリーを紐解くことから始めてしまう。
ところが、小学1年生は興味関心が持続しない。いきなり、「高校? 小学校中学校高校の順番だっけ? ねえ、母ちゃん、高校って絶対に行かなきゃダメなの? 小学校と中学校は行かなきゃダメなんでしょ?」。
すでに7歳児の頭に、「水谷ちゃん」のナゾはない。

それにしても、誰だか知らないが、息子に「義務教育」について中途半端な説明をした大人がいたようだ。とりあえず誤解を解いておこう、と私は説明に入る。
「高校は行きたい人が行けばいい。でも小学校と中学校は『義務教育』という。でもこの義務ってのは、子どもが学校に行かなきゃダメ、ってんじゃなくて、子どもをちゃんと学校に行かせてあげなきゃだめだよ、っていう親の義務なの。子どもから見ると、それは教育を受ける権利、となる」
(これは、金八センセが25年前にテレビでのたまったことの受け売りだったりする)

息子「じゃあ、子どもを学校に行かせないお父さんがいたらどうなるの?」
私  「法律違反だもんなあ」
息子「警察につかまる?」
私  「逮捕はされない、と思うよ。きっと」
息子「どうして?」
私  「法律を破ったってだけで逮捕しちゃいけない、って法律もあるから。逮捕されるのは、悪いことをした後でどこかに逃げてしまう恐れがあったり、悪いことをした証拠を隠してしまうかもしれない時とか」
息子「ふーん。もしも逮捕されたら、その後はどうなるの?」
私  「取り調べを受けて、最後は裁判っていってね、本当に悪いことをしたかどうか、悪いことをしたとしたら、どういう罰を受けるべきかを決める話し合いに出席するの」
息子「どんな罰があるの?」

ここで、私、よせばいいのに、「刑務所、つまり牢屋みたいなところにずっと入ってなきゃいけなかったり、死刑とか」。小学1年生に「死刑」なんて言葉、使うつもりなかったんだ。今夜のニュースを親子で見ているときも、連続幼女誘拐殺人事件の死刑判決のニュースの時はわざと大きな声でしゃべったりして、息子から「死刑ってなに?」と問われないようにすっごく気を遣っていたのに。
気を回しすぎて、疲れ果てて、意識しすぎて、肝心な時に、ついポロリと口にしてしまったというわけ。情けない。

案の定、息子は食いついてきた。「死刑って何?」
私 「日本では、2人以上の人をものすごくひどいやり方で殺した時なんかにね、死刑って判決を受けることがある。それは死ななければいけない罰なんだ」
息子「死ぬ? 誰がその人を殺すの?」
私 「あえていうなら……国、だなあ」

息子は真剣に怒り出した。「絶対に許せない! 人を殺すなんて、だったら警察なんて死ね! 警察なんて許せない!」

こうなると、やっぱり正確を期してしまう私。
「いや。警察が殺す、のではないの」
それから、欧州では死刑制度を廃止している国がほとんどであることや、日本でも死刑については賛否両論あることを説明した。私のあやふやな知識の範囲内で、だが。
さらに、「母ちゃんは、死刑制度にはやっぱり賛成できないとずっと思ってる。でもさ、もしも母ちゃんのすごく大事な人が誰かに殺されたら、母ちゃんは殺した人に死んでほしい、と思ってしまうかもしれない。そこに答を出せずにいるんだよね」

さらに息子が、「死刑って、どうやって人を死なせるの?」と方法を聞いてきたから、さすがに「母ちゃんも、わかんないなあ」とごまかした。そもそも、もっと手前で説明を止めておくべきだったのかもしれない。
こういう時は、夫が毎晩仕事で遅くて家にいないことを恨む。
夫ならもっと上手に、もっと子どもが受け止められる範囲のことを、何か希望のようなものをまぶしながら、語ってくれるだろうに。
私は、そういうことがたぶん、苦手だ。

「ところで何の話しから始まったんだっけ?」
遅ればせながら、私が話しを戻す。
「へ? あ、水谷ちゃん!」
息子の顔に笑顔が戻る。
そうか、もっと先にこうやって話しを戻せば良かったんだ。
たとえ息子相手であっても、私は、人との会話が下手だ。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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