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ひとりでも唯一みじめでない行為

1月6日(本日)付け毎日新聞夕刊に、林真理子さんの新春エッセイが載っていた。
こんな話。
友人の小学生の息子が学校で仲間はずれになってしまった。休み時間、たったひとりで過ごさなくてはならなくなった息子に、林さんの友人は、林さんのエッセイを読ませた。

その一節がこれ。

<本をよく読むからといって、そう頭がよくなるわけでも、立派な人になるわけでもない。しかし読書というのは、ひとりでしていて唯一みじめでない行為だ>

この息子さん、それまで漫画しか読まなかったのに、それ以来、図書館でひとり本を読むようになったという。彼の言葉も紙面に載っていた。
「本のおかげでひとりの時も楽しかった」

本当に楽しかったのか、「みじめではなかったけどね」というのが本音だったのか、それは誰にもわからない。
でも、そうだよな、本を読むって、そうだよな、といろいろなことを思い出した。

高校時代、仲良しグループの友達が同じ日に全員休んじゃったらどうしよう、と本気で案じていた。「そしたら誰と弁当食えばいいのよ」と。
どんなグループの人ともゆるやかにつきあえる人を「すごくかっこいいなあ」とうらやましがりながら、私はとうてい、そんなことは無理だと思っていた。
でも、いざとなったら、確かに私には本があった。さすがに教室の真ん中で一人で本を読む根性はなかったけど、図書館だとか、部室だとか、不思議なもので本1冊あるだけで「逃げ場所」が生まれた。

39歳になった今でも、私は初めての居酒屋やバーに一人で入る時、やっぱり本が1冊必要だ。ちょっとしたきっかけで店のマスターなんかと話し始めたら、本なんてポイと鞄の中に片付けちゃうのだけれど、コミュニケーションの歯車がかちっとはまるまでは、やっぱり本を手放せない。
逆に言えば、本1冊あれば、私はたいがいどんな店でも一人で入って飲み食いできる自信がある。

もちろん、時には、どんなに本を読んでいても、みじめさが背中にべったりくっついて、冷ややかな視線が自分の身に刺さっているような気がして、でも現実にはどんな視線も自分を素通りしていることに気付いてよけいにみじめになったりもして、熱心に本を読んでいるつもりで、ちっとも本の内容が頭に入ってこないような………そういう時だって、あったよ。

たぶん、私は長い間、随分と「ひとり」が苦手で、「ひとりはみじめ」という思いから自由になれなかったんだと思う。
「ひとりで上手にいられる人」の精神的な安定感ほど、うらやましいものはなく、いつかあんな大人になってみたいもんだ、と20代でもなお、そう思っていたりした。
そもそも、「ひとり」をずっと避けてきた。
18歳から今の家族を持つまで、「彼氏いない歴0日」って人生、これどうよ?

でも、もう平気。
いつのまにか私、「ひとり」に随分、免疫がついた。
例えば、職場だとか、ママ友達とか、私抜きでみなで示し合わせてどこかに出かけたり、なんて話を聞いても、せいぜい「あっちゃー、私、嫌われるようなことしたっけかなあー」と思う程度で、それを寂しいとか苦しいと思うこともない。

だから、現役の「ひとりがダメダメ」ちゃんたち、つまり若い人たちも伝えたい。
ちゃんと大丈夫だからね。
傷つけたり、傷つけられたり、反省したり、思い上がったり、人間を相手にみじめな思いをいっぱい積み重ねてれば、ちゃーんと「ひとり」にも、それから「ふたり」にも、「さんにん」にも、「おおぜい」にも強くなれるからね。

なーんてことを書くのは、つい最近、10代の方から、「傷つけ合うのが人間なら、人間なんてやめちゃいたいと思っていた」ってメールをいただいたから。
ははは、わかるわかる、似たようなこと、私も思ってたぞ、と自分の高校時代を思い出しちゃった。
「傷つけるのも傷つけられるのも怖いけど、ひとりはもっと怖いー」ってやつね。

反省をこめて思うのは、とりあえず、生身の人間同士ぶつかりあったり傷つけ合ったりする経験ってものすごーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーく大切だったんだよね。
(メールやネットでのコミュニケーションはこれまた別の技術を要する世界なので、バーチャルのみの「ぶつかりあい」「傷つけあい」では補えないものってあると思う)

でも、時にはどこかに逃げ込んで一人で休憩しないとね、息が続かない。
そんな時、1冊の本ってすごく助けてくれるんだよなあ。
そんなことを、林さんのエッセイを読んで思い出したのでした。


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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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