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記事166◆なぜ秋は空を見上げたくなるか、の記事

■2004年10月28日
■積年のフシギ 秋の空


 秋になると空を見上げたくなる。夏の猛暑で手放せなかった帽子を脱いで頭上を見上げれば、青く澄み切った高い空。ああ、これぞ秋晴れ……。そしてふと思う。「春晴れ」や「夏晴れ」はないのに、なぜ「秋晴れ」なのだろう? そんなフシギを携えて、気象庁天気相談所に出かけた。

 ◇「秋晴れ」は日本一?

 広辞苑を見ても歳時記を見ても、「春晴れ」や「夏晴れ」という言葉はない。穏やかに晴れた冬の日を指す「冬晴れ」という言葉はあるものの、使用頻度では「秋晴れ」の足元にも及ばない。ちなみに、インターネットの検索エンジンGoogleで「冬晴れ」を検索してみたら4550件がヒットしたが、「秋晴れ」では実に11万1000件に上った。では、本当に1年で一番良く晴れる季節は秋なのか。天気相談所で聞いてみた。
 気象庁では、空全体に占める雲の割合が8割超を「曇り」、2割以上8割以下を「晴れ」、2割未満を「快晴」と定めている。「晴れ」と「快晴」を合わせた晴天日数(71~00年の平均値)を見ると、晴天が一番多い月は太平洋側では「12月」、日本海側で「8月」だという。つまり、晴れの日は秋に多い、とは決していえないのだ。

 では空の青さはどうか。

 そもそも空の色が青いのは、大気中にちりや水蒸気が少ないと、太陽光の中でも波長の短い青い色が大気の小さな分子にぶつかってあちこちに散乱しやすいため、人の目には青い色が強調されて見えるからだ。しかし、空気中にちりや水蒸気など大きな分子が増えると、青い光だけでなく太陽光のいろいろな波長の光が散乱して、空は白っぽく見えてしまう。
 「春や夏は気温も高く、空気中の水蒸気が多いため、空がぼんやり見えることが多い。一方、秋と冬は大陸の乾いたシベリア高気圧が張り出してくるので空気中の水蒸気が減る。さらに、上空約5000メートルのジェット気流が日本付近に南下して、空気中のちりを吹き飛ばしてしまうため、春や夏に比べて空気も澄んでいます。だから秋や冬の空は、より青くなります」(同相談所)
 秋空は春や夏よりは青いが、冬も同様で、秋だけが1年で一番青い、とは言い切れないわけだ。それなのに、なぜ日本人は「秋晴れ」という言葉を好み、最もよく使うのだろう。ナゾは深まるばかり……と頭を抱えていたら、天気相談所のスタッフが助け舟を出してくれた。「晴天日数が前の月よりぐんと増えるのが、実は10月なんですよ」

 10月の晴天日数(71~00年平均値)は、沖縄などの例外を除けば全国的に9月より数日増える。東京で3・9日、大阪では4・0日、仙台ではなんと7・0日、日本海側の新潟でも3・1日、それぞれ9月より晴天の日数が多い。
 「夏までの半年間、湿気の多い空を見てきて、ようやくカラリとした青空に出合えるのが秋なのです。この『変化の大きさ』こそが、秋の空を美しく見せているのかもしれません」という相談所スタッフの説明に、ようやく納得。四季の変化を大事にしてきた日本人だからこそ、「秋晴れ」を愛したのである。

 ◇本当に高い?

 「天高く馬肥ゆる秋」という言葉もある。確かに秋の空は高く見える。単に気分の問題なのかと思っていたら、この「秋空の高さ」にも科学的根拠があるという。
 人が空の高さを判断するとき、ものさしにするのが実は雲の存在だ。天気相談所によると、夏の入道雲、つまり積乱雲(せきらんうん)の高さは上空2キロを底に10キロぐらいとなる。この雲を下から見上げれば、雲の高さは「2キロ」ということになる。
 一方、秋の空によく見られるいわし雲やうろこ雲、巻積雲(けんせきうん)ははるか上空約13キロのところにできる。この夏と秋の雲の高さの差が「天高く」を実感させていたわけだ。

 ◇男心か?女心か?

 「○○と秋の空」。さて○○に入る言葉は? こんなことわざクイズを出題されたらあなたは何と答えるだろうか。
 「女心」と答える人が今は多数派だそうだ。しかし元来秋の空に例えられたのは「男心」であった。江戸時代の小林一茶(こばやしいっさ)も「はづかしや おれが心と 秋の空」と、自分の変わりやすい心を句に詠んでいる。もともと「男心」だったことわざが、現代になって「女心」に移り変わってきたらしい。
 うつろう心に例えられるほどに変わりやすい秋の空。それはなぜなのか。

 天気相談所によると、夏は太平洋高気圧、冬はシベリア高気圧が日本上空に張り出して安定するため、天気は安定しやすい。しかし、春と秋はこれらの高気圧の勢力が弱くなるため、大陸からの移動性高気圧がやってくる。高気圧に覆われると晴れ、次に低気圧が来れば天気が崩れる。それを何度も繰り返す。
 「だから、秋だけでなく春も天気が変わりやすいんです。秋のほうが激しく変わる気がするのは、台風のせいでしょうかね」と天気相談所。つまり、このことわざ、「秋の空」ではなく「春の空」だって良いはずなのだ。「男心と春の空」。何かしっくりこない。妙に明る過ぎやしないか。

 男心にしろ、女心にしろ、うつろうものの持つ物悲しさは、やっぱり「秋」の専売特許なのかもしれない。

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プロフィール

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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