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記事61◆「公園のママ仲間が怖い」というお母さんの記事

このお母さん、今どうされているか本当に本当に心配。
育児も人生も楽しんでおられますように、と祈る思いです。

■掲載年月日 2001年04月10日
■母:子供と向き合う/2
■親同士の付き合い怖い
■体が硬直、過食に走る

 公園が怖い。幼稚園の母親同士の付き合いがつらい、という。思春期からの過食は治らない。私が訪ねた東京都内の民間相談室で、菜穂さん(32)=仮名=はタオルに顔をうずめて泣いていた。彼女と向かい合うと、ある女性が二重写しになった。「文京区音羽の幼女殺害事件」の山田みつ子被告。彼女も2人の子を持ち、摂食障害に悩み、母親付き合いに苦しんだという。

   ◇   ◇

 世間と折り合いを付けられない半生だった。討論はできても世間話ができず、友だちもできないまま大人になった。母親になれば変わるかも、と期待したが、かなわなかった。

 2月の雨の日。6歳の長男と4歳の長女の通う幼稚園で、母親の集まりがあった。体が硬直する。どうにか口を開いたら「誰かを傷つけたのでは」と後悔がこみ上げる。話題が欠席した母親の悪口に変わると、もう耐えられない、逃げ出したい、と心が叫ぶ。
 そんな昼下がりは、ひたすら食べる。子供にテレビを見せ、台所でこっそり食べる。コロッケサンド、干しぶどう食パン1斤、ミカン3個……。

 「お母さん、仮面ライダーのポーズって11個もあるんだよ」。息子が台所でポーズを取り始める。「ごめん、もういい」。苦しくて、最後まで見てやれない。息子の泣きべそを見ると、また食べ物に手が伸びる。

 甘えられると体が硬くなる。子への愛はいつも「私だって愛されたかった」という思いにのみ込まれてしまう。「私の苦しかった思いをまだ誰にも聞いてもらっていない!」と叫ぶ幼い自分が、今も心にすんでいる。

 両親は教師で「勉強しろ」が口癖だった。「勉強できないと愛してもらえない」と頑張った。友だちに「まじめ過ぎて話が合わない」と陰口を言われ、クラスでは「さま」付けで呼ばれた。自宅で机に向かう夜は、決まって菓子パンを苦しくなるまで食べた。
 大学受験の時、周囲が「東大」を当然視する中、あえて偏差値の低い大学を選んだ。「受験のために勉強したんじゃない」と誰かに分かってほしかった。小学校で教べんを執ったが、いじめや学級崩壊に傷つき、耐えられずに辞めた。

 結婚し、出産した。「公園デビュー」という残酷な言葉を知った。母親仲間を相手に、どう話していいのか分からない。それでも、子供は友だちに恵まれてほしい、と無理して自主保育サークルに入り、母親付き合いをこなそうとした。

 音羽の事件があったのは、ちょうどそのころだ。まるで自分のことではないか、と打ちのめされた。彼女の苦しみが肌で分かるだけに、彼女の起こした事件が恐ろしかった。相談相手からも「我慢してると音羽の事件みたいになっちゃうよ」と言われた。
 菜穂さんを救ったのは、カウンセラーのひと言だった。「母親付き合いがつらいなら、無理にしなくていいんだよ」。カウンセラーの助言で、体からすうっと力が抜けた気がした。サークルをやめ、母親付き合いの希薄な幼稚園を選んだ。送迎時は園庭に集う母親たちを避け、息子が友人宅に遊びにいく時は玄関先まで送り届けて帰る。「付き合わなくていい」と自分に言い聞かせて。
 事件を起こした彼女に、誰かがその言葉をかけていれば、とも思う。

   ◇   ◇

 最近、子供たちのこんな会話を耳にした。「好きなお菓子は?」と兄が聞き、「私、アメが好きだな」と妹が答える。兄がつぶやく。「ボクは、アメよりお母さんの抱っこだな」

 子供を夢中で抱きしめたくなった。親に受け入れてもらえないつらさは、誰より知っている。でも、心の中には、今も親から愛されたい自分がいる。
 大人になる前に母になった。菜穂さんの過食はまだ続いている。

プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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